以前の転職活動といえば、何十年も前であれば縁故か職安(現ハローワーク)が主流だったのが、新聞の求人欄に掲載したり、求人雑誌や交通機関の看板広告等の求人媒体の活用へと広がり、さらにはネットの活用への変化が起きました。転職エージェントを利用することも一般的です。また、最近では“ダイレクトリクルーティング”なる言葉が広がりを見せて、求人企業から直接お誘いをもらえるようにもなりました。
ダイレクトリクルーティングとは、求人企業から候補人財へ直接アプローチする採用手段のことで、昔からあった手法でもあります。ただ、新しい採用サービスがドンドンと生まれ、多様化するにつれ、採用担当者が候補人財に直接アプローチすることも少なくなり、何かしらの採用サービスを使って間接的にアプローチする状態が当たり前になっていきました。
ところが、労働力人口の減少という外部環境の変化を迎え、人財獲得競争が幕を開けると、ダイレクトリクルーティングが復活しました。
復活と表現したのは、ダイレクトリクルーティングは何も海外から入ってきたまったく新しい考え方なのではなく、日本でもアナログ的に手間をかけて行われていた時代もありましたが、採用サービスの発展に伴って、今は昔で行われることが減っていたところに、今の時代に合った手段というか今風の対応サービス(ネット経由でスカウトメッセージが送れる!)が新たに海外から入ってきたというわけです。
スカウトサービスを利用するだけでなく、ターゲットが集まるような会合で直接本人へ声をかけることもダイレクトリクルーティングですし、例えば、学会や何かの交流会のような会合に、転職エージェントが参加していることってありませんか?名刺交換してみたら、エージェント等の人材会社の人だったと。ある分野の専門家等が集まっていますので、今は転職を考えているかどうかに関わらず、そこに集まる人財と出会える絶好の機会でもあるわけです。
これこそまさに昔からやっていた候補人財への直接アプローチの一つでもあるのですが、自らオフィスの外の世界に出ていき、そこまでの労力をかけてまで採用活動を行う採用担当者は減っていたのです。ま~、ここ最近では採用担当者が自ら積極的に外へ出て活動することも増えていますが。
ただ、この黒船来航という変化が、エージェント等の採用サービスを使って、候補人財へ間接アプローチすることに慣れていた採用現場に影響が出たのです。直接アプローチするようになってきたぞと。
でも一方で、自分たちで候補人財へアプローチするなんてやったことがない採用担当者にとっては、いきなり「これからは自分たちでダイレクトに候補人財へアプローチしようぜ~」と言われても、ノウハウもなく、どうやったら良いかわからないのです。
間接アプローチと直接アプローチとでは『待ち』と『攻め』の違いがあり、自分から直接アプローチするということは、自分たちで『狩り』に出かけなければならないわけです。ところが、特に人事部などの管理部門に所属するタイプの人に、攻めや狩りが得意なタイプは少ない傾向があります。これは営業部門などの外へ攻めていく必要がある部門とは異なり、これまで城の守りを求められてきた管理部門の役割や、そこへ配置してきた人財タイプの違いもあって、いきなり攻めろと言われても状態なのです。従来までの適所適材的な配置も大きく影響していますので、仕方がない状況ではありますが…。
なお、自分から候補人財へ攻める行為は、人材会社であれば日常的にやっている行為であり、それが好きだとか得意だとかで日常的に仕事でやっている人材会社側の人種に比べて、その人材会社を利用する求人企業側は『待つ』タイプが多い傾向があるのです。
このままではダメだと気づいた一部の企業では、採用チームに営業部門から攻めができる人を社内異動させてきたり、攻めの採用業務経験者(他社の採用専門担当者や、人材会社側の人間等)をキャリア採用したり、攻めができるRPOを利用するようになってきました。
「タレントアクイジション(TA)」という言葉を聞かれた人もいるかもしれませんし、外資系だけでなく日本企業の人事組織の名称でも、「採用チーム」ではなく「タレントアクイジションチーム」という組織名を見たことがある人もいるのではないでしょうか?
