採用代行サービスを提供する会社に、資格や免許は必要か?

結論から書くと、採用代行サービスを提供する会社(採用代行会社)の立場としては、どのような採用業務を受託するのかによって、事業免許が必要となる場合もあれば、不要な場合もあります。

また、皆さん側の採用代行会社を利用する立場としては、採用代行会社に対して、どのような内容を依頼されるかで、厚生労働省から許可を受ける(または届出を行う)必要がある場合と、不要な場合があります。

ん?どういうことだ?
採用代行会社側に事業免許が必要となる場合もあれば、不要な場合もある?
採用代行会社へ依頼する企業側にも、何かの許可を取得する必要がある場合と不要な場合があるの?
うん?んんー?

これだけだと、わかるようで、わかりにくいですね。
まず、人を採用するには労働者を募集することが必要ですが、この“労働者を募集するという行為”がキーとなってきますので、少し回りくどい説明から始めます。

厚生労働省が出している『募集・求人業務取扱要領』によると、労働者を募集することについて以下のように定義されています。

労働者募集とは、職業安定法第4条第5項に規定しているように、労働者を雇用しようとする者が自ら又は他人に委託して、労働者になろうとする者に対してその被用者となることを勧誘することをいう。

この文章を、ちょいと雑で平易な表現に置き換えると、こういうことです。

労働者を募集するというのは、労働者を雇用しよう、採用しようとする皆さんのような企業が、自らなのか、自社以外の誰か他人に依頼する方法で、労働者になろうとする求職者に対して、「当社で働いてみない?雇用されちゃわない?」と勧誘することを言います。

ちなみに、この労働者募集には次の3つの方法があるとも書かれていまして、これまたざっくり説明すると…

  • 文書募集
    新聞紙や雑誌、TVCMやネット等の求人広告媒体に掲載、配布することによる募集方法で、労働者を雇用しようとする企業は自由に行うことができます。
  • 直接募集
    労働者を雇用しようとする企業の取締役、もしくはその企業に雇用されている従業員によって、(1)の文書募集以外の方法で行う募集方法であって、これも自由に行うことができます。自分たちで地域の人に声をかけまくる等の行為が該当すると思ってください。
  • 委託募集
    労働者を雇用しようとする企業が、その企業の取締役や雇用されている従業員以外の者に募集業務を代理で行ってもらう方法であって、この方法は自由には行えず、厚生労働省から許可を受けるか、または、届出を行うことが必要です。

『労働者募集に該当する業務』を、皆さんが自分たちの手によって、(1)の文書募集や(2)の直接募集にて行うのであれば、許可や届出だとかは不要で自由に行えます。ところが、もし採用代行会社等の他人に依頼してやってもらうのであれば、(3)の委託募集に該当するので、自由には行えず、皆さんが厚生労働省から許可を受けるか、または、届出を行うことが必要となります。

ほえ?
採用代行会社が何かしらの許可を受けているか、または、届出を行っていればOKということじゃないの?

いえいえ、委託募集を行うには、まずは“募集主である皆さん”が、厚生労働省からの許可を受けるか、または、届出を行う必要があります。それと、『実施報告書』の提出も毎年必要です。募集業務を受託する採用代行会社が、募集主である皆さんから必要な帳簿や書類を提出頂いて、代理で申請することも可能ですが。

う~ん、何やら面倒そうなので、採用代行なんて依頼しないかな。

このままだと、当然そうなりますよね。でも、安心してください!履いてま…
職業紹介事業の許可を受けている、事業免許を持っている会社に依頼すれば、職業紹介事業の一環として行うことができるとされていますので、募集主である皆さんが委託募集の許可やら届出やらを行うなんてことは不要です。

採用代行会社が職業紹介事業の許可を持っていれば、我々はややこしい事は何もしなくて良い?

はい。委託募集の許可や届出も、報告書がどうだとかも、何もかも不要です。
反対に、職業紹介事業の許可を受けていない、無免許である法人や個人に、『労働者募集に該当する業務』を依頼される場合は、無免許である法人や個人が罰せられるだけでなく、皆さんも職業安定法違反で罰せられます。委託募集に係る手続きもやっていない状態なわけですから…

参考にですが、「スカウト業務だけ代行してもらっている」とか、「すでに一部の採用業務をアウトソースしている」といったように、何かしらの『労働者募集に該当する業務』で採用代行を利用する企業は増えているのですが、受託する側の相手(法人に限らず個人・フリーランスも含む)が、職業紹介事業の許可を受けていない、免許を持っていない場合があるのです。

そもそも『労働者募集には該当しない別の業務』を依頼されているのであれば、相手が無免許であっても問題ありません(何か別の業法に関係する場合を除く)。または、『労働者募集に該当する業務』を依頼している場合でも、皆さんが委託募集の許可を受けている、もしくは届出を済まされているのであれば問題ありません。

ええ~?
それマジで?

はい、マジです。キーは、『労働者募集』に該当する業務なのか、該当しない業務なのかです。
さらにもう一つ、皆さんには気を付けて頂きたい非常に重要な点を付け加えます。

近年、採用代行サービスを提供する事業者は増えていて、『法人』として提供している場合もあれば、『個人・フリーランス』として提供している場合もあります(元エージェント出身だとか元人事出身という個人が非常に多い)。ただ、この法人や個人・フリーランスが『委託募集』という概念自体を知らず、また、サービス提供には職業紹介事業の許可が必要だということも知らず、職業紹介事業の許可を受けていない、免許を持っていないという場合が多いのです。

これには職業安定法(主に労働者募集、職業紹介、労働者供給について定められた法律)が関係してきますが、江戸時代や戦前まであった人身売買、強制労働、中間搾取等を防ぐために制定された法律なので、違反した場合は厳しい罰則(罰金や懲役)が用意されているのです。採用業務を、無免許の個人や法人に依頼するのは、あまりにも危険すぎるのです!

以上、長々とした内容でしたが、今回の記事も参考にして頂けましたでしょうか?

また、最後に「これは非常にマズいな~、でもよくあることなんだよな~」というケースも挙げておきましたので、今すでに採用代行を利用中だとか、これから利用を検討されているようであれば、お気を付けください。

前提として、労働者を募集する行為について、自社以外の他人にやってもらうことが禁止されているわけではありません。『許可を受けた者しかやっちゃダメ』と厳しく規制されているということです。この許可を受けた者とは、ハローワーク等の公共職業紹介機関を除けば、委託募集のOKをもらった募集主と受託事業者、もしくは職業紹介事業の許可を受けた事業者等というわけです。

ちなみに、当社は職業紹介事業の許可を受けて、免許を持っていますので、安心してください。履いてま…