人を採用するという選択肢だけなのか?その4

前回のその3に引き続き「業務の外注化」の話を進めます。「業務の外注化」の契約方法としては、請負契約や委託契約を締結することが多いと思われますが、『労働力を提供する/提供してもらう契約ではない』という点を理解しておくことが非常に重要です。

請負、委任や準委任といった類型の違いは多くのサイトでも説明されているので省きますが、世の中では、研究や製造、販売等の様々な業務を“外部の事業者”へ委託しています。

そもそも請負や業務委託と呼ばれる契約とは、『業務の完成もしくは遂行を相手に任せる/任される契約』で、もう少し詳しく言うと、『相手方に何かしらを任せる契約であって、任された相手方は、自らの責任や企画、自己の有する専門的な技術や経験に基づいて対応して、その対価として報酬を支払う契約』です。これは、請負契約等の締結相手方が、法人であろうが個人であろうが同じです。

雇用契約や派遣契約のように、会社の支配下で労働力を提供してもらうのではなく、事業者である相手に任せることになるので、相手方の事業者に対して勤怠管理や指揮命令はできません等の違いが出てくるわけです。

もし仮に、労働力を提供してもらいたくて、自社の直接雇用者や派遣社員と同じように相手方に対して勤怠管理もしたいし、指揮命令もしたい場合だと、それが「内部労働力としたい」のであれば雇用契約でなければなりませんし、「外部労働力を借りる」のであれば派遣契約でなければなりません。

はい、このあたりは今度のテストに出るからアンダーライン!

もっと言えば、税法上でも『請負や業務委託契約』と『雇用契約』については区分けされており、請負や業務委託契約として支払う報酬の場合、消費税は課税対象。源泉所得税については、講演料や弁護士報酬など一定のものに該当する場合を除いて、源泉徴収する必要はありません。一方の『雇用契約』の場合は給与の扱いとなるので、消費税は課税対象外であり、支払側は、支払時に所得税を源泉徴収する義務が生じます。

事業者に任せることと、労働者を雇用することの違いですね。

次に、以下の図の青色点線で囲んだ部分を見て頂きたいのですが、「外部労働力を借りる/派遣契約」と「外部技能に任せる/請負・委託契約」の位置関係を隣同士に書いています。改めてですが、この両者は似て非なるモノですね。

ところが、「請負・委託契約/常駐型(契約の相手方に自社事務所内に常駐して仕事をしてもらっている)」の場合だと、ちょっと注意が必要です。

自社内に常駐してもらっているということは、同じ事務所内の目の前に、時には隣の机に請負・委託契約の相手方がいて、自社の直接雇用者や派遣社員と一緒に仕事をしている状況なので、労働局からは「自社の直接雇用者や派遣社員と同じような労務管理や指揮命令をしているんじゃない?外部の人ということであれば、請負や委託なのか、人材派遣のどちらですか?適正に運用できていますか?」なんて目線で、実態は労働力の提供契約なんじゃないかと疑われるリスクが高まる場合があります。

仮に、「契約は業務委託となっていますが、実態は雇用契約です!」なんてことになってしまうと、労働法絡みの違反となるだけでなく、税法上も…なんてことになりかねません。お~、こわ~。

労務面において、派遣と請負の違い(=労働力の提供を目的とした契約とそうでない契約の違い)についてさらに詳細を知りたい場合は、厚生労働省の「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準(37号告示)とその関連資料」にて見解が示されていますので、参考にされてください。

ま~、すべてとは言いませんが、労働力を提供してもらいたい目的で、特に個人(個人事業主やフリーランス)と『請負・委託契約+常駐型』を選択している企業は、自社の法務部門なのか、顧問弁護士や税理士と現場の実態を確認されることをお勧めします。

こんなふうに書くと、何やら請負や委託は面倒だな…なんて思う人がいるかもしれませんが、そんなことはありません。シンプルに考えた場合、相手方から労働力を提供してもらうことにお金を払うのか、相手方へ任せることにお金を払うのかの違いとお考え下さい。さらに言えば、請負や委託として外部の相手に任せる場合は、同時に労働力の確保にも悩まなくて済みますから。

「ん?何を言ってるんだ?お前は今さっき請負や委託は労働力の提供ではないと言ったばかりだろ?」

と言われちゃいそうですが、こういうことです。

相手に任せたことによって、任せた業務を完遂してくれるだけでなく、“任せた業務を完遂するための人員体制、勤怠管理や指揮命令”についても、任せた相手先が自らの責任において実施してくれるのです。ま~、なんということでしょう!匠に任せることによって、こんなことまでやってもらえるなんて状態です!


人財採用をご支援する当社が言うのもなんですが、その業務に人を採用することだけが解決方法なのか、今一度検討してみるのも一つかもしれません。いや、必要なのではないでしょうか? さてさて、“人を採用するという選択肢だけなのかシリーズ”はこれにて最終回となりますが、参考にして頂けましたでしょうか?